【インタビュー】加藤 圓 先生 ~生徒に寄り添って~

スタッフ:加藤先生のことを、皆様に少しでも知っていただけるよう、インタビューさせていただけたらと思っております。よろしくお願いいたします。

加藤:よろしくお願いいたします。

離れてみて、気が付いた

加藤圓
スタッフ:まず、ピアノを始められたきっかけを教えてください。

加藤:私が3歳になった時に、母がピアノを習いに行かせたそうです。
母はピアノの経験が無く、憧れていたのだと思います。

スタッフ:ピアノが好きなお子さんでしたか?

加藤:幼稚園生の頃は、親や先生を頼りに練習し、卒園するまでにバイエルを終えました。
でも、小学校に入学すると自我が芽生え、練習が面倒になり、ピアノをほとんど弾かなくなりました。
それからは、先生のところへ行く直前に少し練習する、というようなことを続けました。

スタッフ:練習が面倒と感じたのは、なぜですか?

加藤:弾けるようになるまでの過程が大変だったからです。
ピアノが嫌いというわけではなく、練習するより友達と遊びたい、というような考え方になっていたかも知れません。

スタッフ:・・・その後、どういうきっかけで、ピアノの先生になられるところまで、音楽をされるようになったのですか?

加藤:6年生の時、母が入院したことをきっかけに、ピアノを辞めました。
不思議なことに、ピアノを触らなくなると、弾きたいと思ったんです。
そこで、ピアノの先生に「もう一度習わせてください」とお願いしに行きました。
先生は驚いていらっしゃいましたが、受け入れてくださいました。

スタッフ:弾かなくなったから、弾きたくなったのでしょうか。

加藤:
そのまま続けていても、何かのきっかけで弾きたいと思ったかも知れませんが、
私の場合は、1度、辞めたことがきっかけでした。

自らの意志で、意欲的に練習

スタッフ:小さい頃は周りの方に頼りながら練習されていたと伺いましたが、再開されてからはどうでしたか?

加藤:自分の意志でピアノを再開したこともあり、意欲的に練習しました。
幼稚園でバイエルを終えたところまでは順調だったのですが、小学生の時はあまり練習しなかった為、
教材を進めることができず、中学時代はソナチネに取り組みました。
進度は早い方ではありませんでしたが、私にとっては、ピアノを弾くことが、とにかく楽しかったです。

スタッフ:その様子をご覧になったお母様は、どういうお気持ちだったのでしょうか?

加藤:再開した時の気持ちについては聞いていませんが、
私が楽しんで弾いているのを見ていた母は、私に、音大に進学する道を、提案してくれました。

スタッフ:進学に向けて、どのように勉強されたのですか?

加藤:高校1年生の時に、どういうご縁だったのか分からないのですが、八田惇先生に、一度だけ見ていただいたんです。
その後、荘幸子先生からご指導いただけることになり、毎週水曜日にに荘先生のところに通いました。
毎日必死に練習していました。一番、頑張った時期かもしれないですね。
短大のピアノ科に受かったときは、本当に嬉しかったです。

荘先生のご指導

スタッフ:入学後は、どういう学生生活をされましたか?

加藤:短大で仲良くなったお友達の中に、大阪音楽大学の4年制に合格できず、短大に来ている子が多くいました。
その子たちは、短大卒業後に、大阪音楽大学3年次に編入することを目標にしていました。
そんなお友達から刺激を受け、私も頑張ってみたいと思い、編入を目標に取り組みました。
私は本当に、先生にもお友達にも、そしてピアノを弾かせていただける環境にも、恵まれていたと思います。

スタッフ:その後、編入されたわけですが、
高校生から荘先生に習っていらしたということは、長くご指導いただいたのですよね。

加藤:そうですね、高校1年生から大学を卒業するまでなので、7年間でしょうか。
途中、先生がお休みされていた時期があり、その時は小森谷泉先生からご指導いただきました。

スタッフ:荘先生のレッスンは、加藤先生にとって、どのようなものでしたか?

加藤:荘先生のご指導は、とても分かりやすかったです。
先生は私のことを見て、私に合ったご指導をしてくださっていたのだと思います。

今も鮮明に覚えている

加藤圓
スタッフ:加藤先生は、生徒さんの発表会の曲目を選ぶ際、荘先生のように、生徒さんに合ったものを選ばれますか?
それとも、あえて課題となるようなものを選ばれますか?
状況にもよると思いますが・・・。

加藤:あまり得意でないものを弾くことも、勉強のためには必要だと思います。
ただ、基本的に生徒さんには、好きだと思える曲を弾いてもらいたいです。
共感して弾くと、気持ちがのって、いい演奏になりますよね。
特に発表会では、私自身、好きな曲を弾いたときのことを今も鮮明に覚えているので、
生徒さんにもそういった経験をしてもらえると嬉しいです。


スタッフ:発表会のとき、どんな曲を弾かれたのですか?

加藤:低学年のときに≪エリーゼのために≫を弾きました。
中学生のときは、クーラウの≪ロッシーニの主題による変奏曲≫、
高校生のときは≪悲愴≫の第1楽章を弾きました。

スタッフ:
私も高校生のときに≪悲愴≫を弾きました。大好きです。

加藤:
1番最初の音で、音楽に入り込めますよね。

辞めることは、勧めない

スタッフ:ピアノの先生のお仕事は、いつから始められたのですか?

加藤:大学4年生のときに始めました。

スタッフ:学生として教わりながら、講師として教えるということに、戸惑いはありませんでしたか?

加藤:最初は教え方が分からず、手さぐりの状態でしたが、とにかく一生懸命取り組みました。
私は小さい頃に、「将来は幼稚園の先生になりたい」と思っておりましたので、
学んできたピアノを教える、という形で子どもさんと接することができ、とても嬉しかったです。

スタッフ:子どもさんに教える際に、大切にされていることは何ですか?

加藤:それぞれのお子さんに、どのような言い方をしたら伝わるのか?ということを、
私なりに考えてお話していますが、間違っているかもしれないので、
保護者の方からご指摘いただけるとありがたいと思っています。

スタッフ:初めてピアノに触れるお子さんにご指導される際は、どのようなことに気を付けていらっしゃいますか?

加藤:とにかくピアノを嫌いにならないでほしいと思っています。
練習しないと弾けるようにならないので、「練習してね」とは言いますが、
言い過ぎると嫌になってしまうかもしれないので、そこのバランスが難しいですね。

そのことに関して、大切にしていることがあります。
私がこの仕事を始めた頃に、母から「練習してこない子がいても『辞めたらどうですか』とは絶対言わないように」と、言われました。
先ほどお話しましたように、私は小学生の頃、練習しない子どもでしたが、中学生から前向きに取り組むようになりました。
その経験から、仮に練習しない子がいたとしても、続けていくうちに変わる可能性がある、ということが身を持って分かるので、
私から生徒さんに辞めるよう勧めることは、しないと決めています。

生徒に寄り添う指導法

加藤圓
スタッフ:生徒さんに、ピアノを通してどのように成長してほしいですか?

加藤:「好きな曲を練習して、弾けるようになる」経験を通して、喜びや達成感を感じ、
それが「私は出来る、僕は出来る」といった自信に繋がるといいなと思います。

スタッフ:
そのために、毎回、先生が生徒さんに少しずつ高い壁を用意し、
生徒さんはそれを乗り越えていく、という感覚でしょうか?

加藤:
基本的にはそうなのですが、高い壁を乗り越える時期にいらっしゃる方と、そうでない方がいらっしゃいますので、
毎回みなさんに、同じように高い壁を見せているというわけではありません。

スタッフ:
なるほど・・・。
「前進したり、壁を乗り越えたりすることが良いことだ」と知らず知らずのうちに思ってしまっていました。
生徒さん、お1人お1人に今、必要なことは、必ずしもそうとは限らないですよね。

加藤:
生徒さんの状態を見極めるのは難しいですが、私は「無理をしてでも絶対に進まなければいけない」という考え方ではありません。
生徒さんの様子をよく見て、考えて、一緒に乗り越えていけたらいいなと思いますね。

スタッフ:
すごく勉強になります。ありがとうございます。

変わらない気持ち

スタッフ:ピアノ講師として、これからの目標はありますか?

加藤:
私が小さい頃にピアノを習っていたときは、主に、古典派の時代の作品を弾いていました。
クラシックなものから始めて、徐々に、レッスンの中で扱う作品を広げていく、というような感覚でした。

ですが、大学を卒業して講師になり、こどもさん向けの近現代の作品や、ポピュラーな作品を学ぶ中で、
小さい頃からそういった作品を弾くことも、素敵だなと思っています。

実際に、近現代の曲が好きだという子も増えているように感じます。もちろん、古典が好きな子もいます。
今後も、自分が子どもだったときに弾いていない曲もどんどん勉強して、伝えていきたいなと思っています。

スタッフ:最後の質問です。加藤先生にとって、音楽とは、どんなものですか?

加藤:難しいことは言えませんが・・・好きなものですね。
数年前に、小学6年生のときの担任の先生が定年退職されたのですが、それにあたり、数十年ぶりに同窓会がありました。
そのとき、私が先生に、旧姓で名前を名乗ると「覚えているよ、音楽が好きだったね」と言っていただいたんです。
「・・・そうだったんだ!」と、ものすごく嬉しかったですね。

ピアノの練習をあまりしなかった小学校6年間でしたが、音楽の授業が好きだったのかも知れません。
先生が覚えていて下さったことが嬉しかったですし、「私、音楽好きだったんだ!」と、再発見しました。
音楽は、私の好きなものです。